第25章 脹相〜転ぶのを助けてもらうと〜
「脹相?」
「ああ」
「どうしたの?」
「……いや」
脹相がゆっくり手を離す。
そこでようやく。
自分がどこを掴んでいたのかに気づいた。
「……」
腰。
咄嗟だった。
考えるより先に手を伸ばした。
だから、掴んだ瞬間には何も考えていなかった。
けれど。
今になって、その感触が鮮明に蘇る。
細い。
驚くほど細かった。
そして。
服越しではあったが、柔らかかった。
指先に伝わった感触が、思っていたよりずっと柔らかくて。
「……」
脹相は思わず自分の手を見る。
さっきまで、あの腰を掴んでいた手。
「……脹相?」
「ああ」
「本当に大丈夫?」
「問題ない」
そう答えたものの。
脹相自身が一番問題だった。
心臓が妙に速い。
「助けてくれてありがとう」
「ああ」
「すごいね。反応早かった」
「転ぶと思ったから」
「咄嗟に腰掴んだね」
「……」
その言葉に。
脹相の動きが止まる。
「……そうだな」
「私、重かった?」
「いや」
脹相は即答する。
「軽かった」
「そう?」
「ああ」
少し間を置いて。
「……細かった」
「え?」
「……」
言ってしまった。
脹相は目を逸らす。
「腰が」
「……」
私も少しだけ驚く。
「そんなに?」
「ああ」
「自分では普通だと思ってるけど」
「そうか」
脹相はそれ以上言わない。
言えるはずがない。