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呪術廻戦〜脹相〜

第23章 脹相〜私の特等席〜


 
 ある夜。

 私はいつものように、脹相の足の間に座っていた。

 テレビを見ているうちに眠くなってくる。

「……眠い」

「寝てもいい」

「ここで?」

「ああ」

「じゃあ、ちょっとだけ」

 私はそのまま身体を預ける。

 脹相の足に背中をつける。

「……」

 脹相は動けない。

「……脹相」

「ああ」

「頭、撫でて」

「……」

 一瞬。

 脹相の心臓が大きく鳴った。

「分かった」

 そっと手を伸ばす。

 あなたの頭へ。

 優しく撫でる。

「……」

「やっぱり落ち着く」

「そうか」

「あったかい」

「……そうか」

 脹相の声は平静だった。

 けれど。

 心臓はまったく平静ではない。

 あなたが自分の足の間で安心している。

 その事実が。

 嬉しくて。

 愛おしくて。

 どうしようもなく胸を締めつける。

 けれど。

 今は何も言わない。

 ただ頭を撫でる。

 それだけ。

「……ねえ」

「ああ」

「私、いつからここに座るようになったんだろう」

「……俺にも分からない」

「ふふ」

「だが」

「うん?」

「もう慣れた」

「私も」

 あなたが笑う。

「ここ、落ち着くんだよね」

「……そうか」

 脹相は少しだけ目を伏せた。

 あなたがここを居場所だと思ってくれている。

 それだけで嬉しい。

「じゃあ、これからもここに座る」

「……ああ」

 脹相は小さく頷いた。

「好きにするといい」

「うん」

 あなたは目を閉じる。

 脹相はまた頭を撫でる。

 一定のリズムで。

 優しく。

 けれど、その表情は少しだけ困っていた。

 ――これ以上、好きになったらどうする。

 そんな考えが浮かぶ。

 付き合っていない。

 だから、今は何も言えない。

 それでも。

 自分の足の間にあなたがいる。

 その姿が、もう日常になってしまった。

 いなくなったら。

 きっと物足りない。

 そう思うくらいには。

 脹相にとって、あなたはもう大切な存在だった。

「……おやすみ」

「ん……」

 返事は小さい。

 脹相はあなたの頭を撫でながら。

 もう一度だけ、深く息を吐いた。

 今日も心臓はうるさい。

 けれど。

 この時間を手放したいとは思わなかった。
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