第1章 脹相〜出会い〜
それでも。
数日後、私が任務中に怪我をしたと聞いた瞬間。
脹相は誰より早くその場へ向かっていた。
「大丈夫か」
病室の扉を開ける。
ベッドの上にいる私を見た瞬間、彼の表情がわずかに揺れた。
「脹相……?」
「……怪我をしたと聞いた」
「あっ…ちょっと切っただけなんだけどね」
「ちょっとではない」
いつもより低い声だった。
私は思わず笑う。
「心配してくれたの?」
「……」
脹相は黙り込んだ。
答えられない。
本当は、怖かった。
もし二度と会えなくなったら。
もし目の前から消えてしまったら。
そんなことを考えた自分に、脹相は驚いていた。
「……ああ」
やがて、短く答える。
「心配した」
それだけだった。
けれど、その言葉を口にするだけで精一杯だった。
私は少し驚いたあと、柔らかく笑った。
「ありがとう」
その笑顔を見て、脹相は目を逸らす。
耳が赤くなる。
それを隠すように、彼は窓の外を見た。
「……早く治せ」
「うん」
「無理をするな」
「うん」
「……俺を心配させるな」
最後の言葉だけは、ひどく小さかった。
「え?」
「何でもない」
また同じ言葉。
けれど今度は、私は少しだけ分かった気がした。
脹相が何でもないと言うとき。
本当は、何か大切なことを隠しているのかもしれない。
そして彼はまだ知らない。
自分が初めて私を見たあの日から、ずっと。
その視線が、私だけを追いかけていたことを。