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呪術廻戦〜脹相〜

第6章 脹相〜着替え〜


「ああ」

 脹相は深く息を吐いた。

「次からは、必ずノックする」

「うん」

「返事がなければ入らない」

「そこまでしなくても……」

「必要だ」

「分かったよ」

 私は笑った。

 その笑顔を見て、脹相は少しだけ安心する。

「じゃあ、もう気にしないでね」

「ああ」

「約束」

「……約束する」

 そう言って、脹相は部屋を出ようとする。

 けれど、ドアのところで立ち止まった。

「……」

「どうしたの?」

「いや」

 振り返らないまま、小さく言う。

「本当に、すまなかった」

「もういいって」

「……ああ」

 ドアが閉まる。

 その直後。

 廊下に立った脹相は、壁に背を預けた。

「……」

 長く息を吐く。

 心臓がうるさい。

 自分でも驚くほど、動揺していた。

 ――落ち着け。

 何度もそう言い聞かせる。

 わざとではない。

 事故だった。

 それなのに、思い出すたびに顔が熱くなる。

「……俺は何をしているんだ」

 小さく呟く。

 すると。

「脹相?」

 ドアの向こうから声がした。

「何だ」

「さっきから廊下にいるけど?」

「……何でもない」

「またそれ?」

 私は笑った。

 脹相は目を閉じる。

 その声を聞くだけで、さっきまでの動揺がまた蘇る。

「……今日はもう、俺は自分の部屋にいる」

「え、なんで?」

「……少し落ち着きたい」

「ふふ、やっぱり気にしてるじゃん」

「……」

 図星だった。

 私はドア越しに笑う。

「もう気にしなくていいって」

「ああ」

「脹相」

「何だ」

「次からノックしてね」

「……分かった」

「じゃあ許す」

 しばらく沈黙。

「……ありがとう」

 脹相の声が聞こえた。

 私はまた笑った。

 その日から。

 脹相は私の部屋の前を通るたび、必ず一度立ち止まるようになった。

 そして、必ずノックする。

「入っていいか」

「いいよ」

 そのやり取りをするたびに、私は少しだけ嬉しくなる。

 そして脹相は、そのたびに思う。

 ――もう二度と、あんなことはしない。

 ……けれど。

 あの日のことを思い出すたびに胸が騒ぐのは、しばらく治まりそうになかった
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