第4章 第四話
分かっている、分かっていながらの言葉に彼の心は波立ち、有頂天にさえなる。実に単細胞的だ、だがそれに流されたいとさえ思うのだ。
余裕などない。それでもせめて、誠実に言葉を返そうと鬼道は口を開いた。
「だが、俺は本心でそう思ってる。お前に……」
そこまで言ったところで、ピタリと鬼道の言葉が止まった。
さりげなく彼女がジャージの腕を擦り合わせたとき、彼の目がかすかに震えた彼女の肩をとらえたからだ。ゴーグルの奥で鬼道は目を細める。その震えが、いつもの委縮から来るものではないことなど一目瞭然だった。
駆け引きも信頼も、すべて思案の外だった。鬼道は自分のもうひとつのトレードマークであるマントを外して立ち上がる。そしてそれを何も言わず、彼女の背後から抱きしめるようにマントを着せつけた。
「き、鬼道さん……!?」
彼女の体にマントを巻き付けた瞬間、爽やかな制汗剤の匂いが鼻を掠める。は鬼道の行動に慌てふためき、これまで聞いたことの無いほど大きな声を発して鬼道を振り返った。大きな瞳が動揺に見開かれ、ゆらゆらと揺れている。その眼差しを眺めながら鬼道は囁いた。
「寒いんだろう。着ておけ」
狼狽する彼女を他所に鬼道はいっそうマントを強くまきつける。マントの紐を後ろから手を回して彼女の首元で結んだ。
制服の時とは違って薄着なのだ。それに部活の後、火照った身体のままここへ来たのだろう。この部屋は空調もよく効いている。寒さを感じるのは当然だった。寒さに震える彼女に気づいた時、勝手に身体が動いていた。
「ですが、これは鬼道さんの……! 」