第1章 【黒洲】お題 海
茜色の空に赤い輪が溶け込んでいく世界。防波堤の上で、私は恋人のあすか様と釣りをしに来ておりました。
お目当てはキジハタ。関西でアコウとも呼ばれる白身魚です。ちなみに、関東でのアコウは、深海魚のアコウダイを指します。キジハタは赤褐色の体にオレンジと黒の模様が特徴的です。幻の魚と称される高級魚でございます。
ここは大型キジハタ霊の生息スポット。現世では40センチメートル以上が大型と呼ばれるそうですが、あの世では最大400センチメートルの物が釣れるのだとか。
え?釣れたら捌くのか、と?
捌く前に、売り捌きますね。
現世サイズでも大型なら約2万円の代物。あの世サイズでとなると、さらなる価格上昇が見込めます。
正規のマーケットですよ?闇のマーケットは頻繁には使いません。
なぜ闇のマーケットを知っているのか?それは……、まあ……。
それはともかく。
糸を垂らし始めたのは1時間前でした。私は別の中型魚を2匹釣りましたが、あすか様は小魚1匹釣れませんでした。
「うまくいかないな……。」
「あと少し待ってお互い何もヒットしなければ、帰りましょう。」
周りには釣りをされている死神や黒猫が複数人いらっしゃいました。皆様玄人といった風格で、どなたかが大物を釣り上げた際には拍手が聞こえてきました。
私は空に向かって大きく伸びをしました。