第12章 全て元通り
そう指示をして届いた指輪は誕生日の日に間に合った。
毎年自分の誕生日の為に予約した店で、二人分のコースを一人で食べて終わる。
今年も同じことの繰り返しかもしれない。
今年はさらに、来るかも分からない悟の結婚指輪まで用意したのだから、椿は自分に失笑した。
都心の喧騒から少し離れた場所に、そのレストランはひっそりと佇んでいた。
古い洋館を改装した店で、重厚な扉を開けば、柔らかな照明に照らされた深い色の木目と、磨き上げられた床が広がっている。
店員に椅子を引かれ、椿は静かに腰を下ろした。
店員が膝の上にナプキンを広げると、何気なく正面へ視線を向ける。
昴も何も言わずに椿の背後に立った。
毎年、時間になれば椿は悟を待たずにコースを始める。
昴は今年もそうなると思っていたが、時間が過ぎ、支配人が椿にコースを始めるか問いかけた時、椿は片手で彼を止めた。
「…今日は待ちます」
そう言った椿に、昴は目を見開いた。
昴は悟が来なくて椿を憐れんだことなんて無かった。
それは椿自身が悟を待っていたことなど無かったからだ。