第12章 全て元通り
店の奥にあるVIPルームは、表の煌びやかな売り場とは違い、静かで落ち着いた空間だった。
厚い絨毯が足音を吸い込み、淡い色の壁には大きな鏡と絵画が飾られている。
中央には艶のある木製のテーブルと、向かい合うように置かれたソファ。
その上には既に、黒いベルベットのトレーが用意されていた。
「お待ちしておりました」
支配人が恭しく頭を下げると、白い手袋をした店員がトレーの上に二つのリングケースを並べた。
蓋が開かれ、柔らかな照明を受けて、二つの結婚指輪が静かに輝いた。
椿はその片方を見つめた。
オーダーした時は、どうせ悟は喜ばないと思い、適当に注文していた。
改めて自分がオーダーした悟の指輪を見て、椿は急に不安になった。
あの人の仕事には邪魔になるかもしれないから、もう少し細くした方が良かっただろうか…。
今になって、椿は本当に何も考えずにこの指輪を用意したのだと気が付いた。
「もう少しラインを細くできるかしら?」
「可能でございます。ただ、全体を削り直すことになりますので――」
椿は支配人の言葉に、傲慢に頷いた。
「構わないから、直してちょうだい」