第12章 全て元通り
だけど、一刻、一刻と過ぎていく時間が、椿の心を少しずつ削っているような気がして、昴は下ろしていた拳を強く握った。
椿は何故、自分が悟を待っているのか分からなかった。
毎年一人でも食べるのは、せっかく用意してくれた店への贖罪でもあった。
このまま悟を待っていても来ないことは分かっている。
二人分の食材を無駄にすることは流石に出来なかった。
「…始めてちょうだい」
椿が支配人に目配せすると、支配人は小さく頭を下げ、店の奥へ戻っていった。
代わりにソムリエがワインリストを持ってきた。
食事が始まる様子を見て、昴は小さく息を吐いた。
傲慢な椿を煩わしく思うこともあるが、彼にとって椿は守るべき主人なのだ。
彼女は出会った頃からずっと、見えない傷を抱えていた。
これ以上椿が傷付くのは見たくなかった。
「…っ」
そんなことを考えていると昴は顔を上げた。
同時に重たい扉が開かれる。
「……お連れ様がお見えになりました。」
支配人の声に、椿は弾かれたように顔を上げた。