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緋色の誓い

第7章 新たな道標



右手にはサラシが巻かれ、その白布には汗と滲んだ血が薄く染みていた。

呼吸は荒い。

それでも振る。

止まれば、自分の弱さを認めてしまう気がして。

ガラッ。

静かに道場の戸が開いた。

剣心だった。

朝餉の支度を終えたのだろう。

道着姿のまま、道場へ足を踏み入れる。

竹刀を振る斗亜を見つめるが、すぐには声を掛けない。

ただ、その太刀筋を静かに見守る。

斗亜は気配だけで誰が来たのか分かった。

兄貴だ。

それでも振る手は止めない。

止められない。

まだ足りない。

もっと速く。

もっと鋭く。

もっと、あの日の自分に近づかなければならない。

竹刀が空気を裂く。

シュッ。

シュッ。

一本振るたびに、呼吸が乱れていく。

剣心はしばらくその様子を見つめていたが、やがて静かに口を開いた。

「斗亜」

竹刀が止まることはない。

「何だ?」

短く返事だけが返ってくる。

「手合わせをするでござるか」

その一言で、斗亜の竹刀がぴたりと止まった。

ゆっくりと振り返る。

額から汗が伝い落ちる。

その目には、焦りと悔しさが色濃く宿っていた。

斗亜は竹刀を握り直す。

「あぁ…頼む」

その一言だけ返すと、道場の中央へ歩み出た。

剣心も静かに向かい合う。

二人が竹刀を構えた瞬間、道場の空気がぴんと張り詰めた。

斗亜は大きく息を吐く。

右手に巻いた手拭いの上から、竹刀の柄を握り直した。

擦り切れた掌がじくりと痛む。

握るたびに傷口が軋み、熱を帯びたような痛みが走る。

それでも、その痛みが今は心地よかった。

鈍くなりかけた感覚を無理やり呼び覚ましてくれる。

「行くぞ…」

低く呟く。

剣心は静かに竹刀を構えた。

「いつでもよいでござる」

その言葉が終わるより早く、斗亜の体は畳を蹴っていた。

一気に間合いを詰める。

速い。

自分でも分かる。

悪くない踏み込みだった。

竹刀が一直線に剣心へ走る。

パシッ。

乾いた竹の音が響く。

軽く受け流された。

止められた感覚すらない。

力の向きを変えられただけで、自分の竹刀は横へ流されていく。
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