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緋色の誓い

第7章 新たな道標



だが笑った途端、小さな咳が込み上げた。

斗亜はすぐに背中へ手を添える。

強く叩かない。

優しくさする。

その加減だけは、まだ少しぎこちなかった。

剣心は三口ほど食べたところで椀を伏せる。

「もう十分でござる」

「無理すんな」

斗亜は椀を受け取り、代わりに湯呑を手渡した。

剣心は一口だけお茶を飲む。

その瞬間、目が少し細くなる。

熱のせいなのか。

お茶の味なのか。

本人にも分からないような表情だった。

やがて口元が少しだけ緩む。

「お茶の味は…昔と変わらぬでござるな」

斗亜は眉間へ皺を寄せる。

「そこだけは上達しねぇ」

「不思議でござる」

「だから不思議って言うな」

剣心は声を立てないように笑う。

しかしその笑いも長くは続かず、また咳が漏れた。

斗亜は布団を肩まで掛け直し、枕を少しだけ高く整える。

「もう寝ろ」

「あぁ…」

剣心は素直に目を閉じた。

普段は誰よりも皆を支えている背中。

その背中が今日は熱に伏せている。

それだけで胸が落ち着かなかった。

部屋を出ようとした、その時だった。

「斗亜…」

小さな声が背中を呼び止める。

斗亜は振り返る。

「ん?」

剣心は薄く目を開けた。

「すまぬ」

斗亜は一瞬だけ言葉を失う。

「何がだよ」

「手間を掛けてしまうでござる」

斗亜は少し困ったように笑った。

「風邪ひいただけだろ。そんなことで謝るな」

剣心は静かに目を伏せる。

「それでも…」

斗亜は短く息を吐いた。

「俺だって今まで散々世話になってきた。お互い様だ」

その一言に、剣心は安心したように小さく頷く。

斗亜は静かに襖を閉めた。

廊下へ出ると、薫が心配そうに待っていた。

目が合うなり尋ねる。

「どうだった?」

「粥は食った」

薫は少しだけ安堵した表情になる。

「お茶は?」

斗亜は数秒黙り、それから苦笑した。

「昔と変わってないって言われた」

薫は一瞬きょとんとする。
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