第4章 因縁の残火
「警官の死亡数四十一、重傷者多数。一般市民はまだ確定しないが、今のところ命に関わる報告は入ってない」
「…それだけでも、救いでござるよ」
剣心は深く息を吐き、静かに目を閉じた。
その横顔には、安堵と、責任と、祈りが混じっている。
斎藤は少し顎をしゃくり、三人を見た。
「どう思おうと人の勝手だ。志々雄のアジトに向かう前に、俺は事後処理を済ます必要がある。連絡があるまで、お前らは“葵屋”で待っていな」
言い終えると、踵を返し、迷いなく去っていった。
三人はその姿を見送り、ゆっくりと歩き出した。
「しかし、なんだな…」
左之助がぼそりと言った。
「何?」
「共に闘うって言っても、水と油みてぇに相いれねぇのは京都に来ても相変わらずだなって話よ」
「左之は警察の厄介になっていたようだが…ひょっとして斎藤と和解したのでござるか?」
剣心が素朴に問いかけた瞬間…。
ゴッ!!
左之助の拳が剣心の頭に綺麗に入った。
「なんで俺があの陰険野郎と仲良くしなきゃならねぇんだよ!! 決着は志々雄一派を倒した後につけるっつってんだ!!」
「兄貴をグーで殴るとは…」
斗亜が眉をひそめるが、左之助は全く気にしない。
「それより腹減って死にそうなんだよ!さっさと葵屋に案内しな!」
「ったく…」
三人は歩みながら、見慣れない京都の静けさを感じていた。
街全体が、ほんのわずかだが荒んでいる。
しかし、どこか生きている。
「しかし…京都にも御庭番衆が居て、今度は俺たちの味方になっているなんてな。“奇縁”というのはあるものだ」
斗亜の横で剣心がふっと笑う。
「剣心!斗亜!それに左之助!!」
葵屋の前。
竹刀を肩にかけて立つ弥彦が、目を輝かせて駆け寄ってきた。
「よぉ弥彦~。何だ、こんなとこに立たされてんのか?悪戯でもして罰受けてんのか?」
「バーロー!!見張りだよ見張り!!」
弥彦は左之助の胸を竹刀でツンツン突きながら怒る。
「おい薫!!剣心が帰ってきたぞ!!」
その声を聞いた瞬間、葵屋の戸がそろり…そろり…と開いた。
斗亜は呆れ気味に眉を下げる。