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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第5章 【第四話】黒衣に宿る祈り


彼女の足元へ、淡い光が走った。

黒い靴がイノセンスの力を帯び、団服の裾がふわりと揺れる。

次の瞬間。

リナリーの姿が、視界から消えた。

「……っ!」

空気を破る鋭い音が、すぐ目の前で弾ける。

反射的に右のレイピアを横へ走らせた。

直後、リナリーの蹴りが白銀の刃へ叩き込まれる。

腕へ響いた衝撃に、靴底が石床を滑った。

「速い……!」

「まだ行くわ!」

リナリーが床を蹴る。

宙へ舞い上がった身体が、信じられない角度で翻る。

上方から落ちてくる蹴撃を、私は左のレイピアを交差させて受け流した。

白い光が、火花のように弾ける。

身体を捻り、その勢いのまま踏み込んだ。

右の刃を、リナリーの脇腹すれすれで止める。

そのつもりだった。

けれど、剣先が届くより早く、リナリーは軽やかに身を翻して私の間合いから抜ける。

石床へ着地した彼女と、数歩の距離を置いて向かい合った。

互いに息を吐く。

リナリーの瞳は、楽しそうに輝いていた。

「すごいわ。二本とも、本当に身体の一部みたいに動くのね」

「あなたこそ……あんな速さで動くなんて、想像以上だったわ」

腕に残る衝撃を確かめながら、私は二本のレイピアを構え直す。

リナリーの蹴りには、迷いがなかった。

ただ速いだけではない。

誰かを守るために前へ立ち、その身で敵を退けるために磨き上げられた強さ。

昨日出会ったばかりでも、それは不思議なほど伝わってくる。

「もう少しだけ、いい?」

「もちろん」

私は小さく微笑んだ。
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