第39章 【第三十四話】約束を守るために
ティファは、霧の向こうの崩れかけた通路を見た。
そして、ゆっくりと息を吸う。
「……アレン」
声が震えた。
それでも、目は逸らさなかった。
「先へ進んで」
アレンの表情が、苦しげに歪む。
「ティファ……」
「私がここで、この歪みを止める」
ラビの目が見開かれた。
「は……?」
ティファは、喉元へ手を添える。
白銀の光が、足元から広がっていく。
霧の壁へ。
崩れかけた通路へ。
仲間たちが進むべき道へ。
「全員がここで止まったら、先へ進む道まで消える」
「だから、行って」
ラビの顔が、歪んだ。
「嫌だ」
即答だった。
「ラビ」
「嫌だって言ってんだろ!」
ラビは、空いた手を霧の壁へ叩きつけた。
「また目の前で、届かねぇ場所に行く気かよ……!」
その声が、痛いほど胸に刺さる。
ティファは、触れ合ったままの指先を見た。
この手を離せば、きっと彼は傷つく。
けれど、離さなければ、彼はここに残ってしまう。
それだけは、だめだった。
「……ごめんね」
小さく呟く。
そして、ティファは自分の意思で、ラビの指先から手を離した。
「ティファ!!」
ラビの叫びが響く。
白銀の光が、霧の壁へ強く走った。
通路の歪みが、一瞬だけ押し止められる。