第37章 【第三十二話】闇に沈む江戸
雨上がりの夜。
一行は、ようやく日本へ辿り着いた。
目の前には、闇へ続く石段と巨大な鳥居。
無数の幟が風に揺れ、散った花弁が濡れた石畳を滑っていく。
「……ここが、日本」
チャオジーの背に負われたリナリーが、小さく呟いた。
その声は弱い。
まだイノセンスは発動できず、自力で立つことすら難しい状態だった。
ティファは、そっと彼女を見る。
「……ここまで来たのね」
呟いた声は、思ったよりも静かだった。
安堵ではない。
胸の奥にあるのは、ようやく辿り着いたという実感と、それ以上に強い、不穏なざわめきだった。
その時、ちょめ助がはっと顔を上げた。
「誰か来るっちょ!」
石段の上から現れたのは、頭巾を被ったAKUMAだった。
ラビが鉄槌を構えるより早く、ちょめ助が声を上げる。
「川村っちょ!」
「ちょめ助!」
どうやら、同じくクロスに改造されたAKUMAらしい。
ちょめ助は再会を喜んだが、その直後。
川村の身体へ、蜘蛛の巣のような黒い糸が絡みついた。
「……逃げ……」
川村の声が途切れる。
ちょめ助の表情が変わった。
「全員、隠れるっちょ!!」