第35章 【第三十話】紅い雪の降る海
「お互い、目で追っているから」
「っ」
思わず言葉に詰まる。
リナリーまで「えっ」と目を瞬かせた。
「そ、そうだったんですか……?」
「そうだったのよ」
「やめてください、アニタさん」
顔が熱い。
けれど、アニタは楽しそうに笑うだけだった。
「で?」
逃がさない目。
「どこに惹かれたのかしら?」
ティファは少し黙り込んだ。
ラビの顔が浮かぶ。
軽薄そうな笑い方。
掴みどころのない態度。
いつもふざけているくせに。
誰より周りを見ている目。
そして。
誰にも見せない孤独。
ティファは小さく息を吐いた。
「……優しいところ」
アニタが少し目を細める。
「へぇ?」
「普段は軽いし、茶化すし、うるさいし」
「でも」
ティファは静かに続けた。
「誰かが苦しい時、絶対に見て見ぬふりをしないんです」
胸の奥が、少し熱くなる。
「自分が傷付いていても、平気な顔をして隣に来る」
リナリーが、静かに目を見開いていた。
多分、さっきのラビを思い出している。
ティファは少しだけ笑った。
「……そういうところ、ずるいと思う」
数秒。
沈黙。
そして、アニタがふっと笑った。
「重症だねぇ」
「うっ……」
「でも、分かるわ」
アニタの声は、どこか懐かしそうだった。
「不器用なくせに、人を守ろうとする男っていうのは厄介なのよ」
きっと。
クロス・マリアンを思い出している。
ティファは小さく視線を伏せた。
「……本当に厄介です」
ぽつりと零すと、リナリーがくすっと笑った。
「ティファ、顔が優しい」
「え?」
「ラビの話をしている時」
思わず顔を上げる。