第4章 【第三話】檻と家のはじまり
人の魂には、それぞれ固有の響きがある。
普段は、声や触れた指先を通して、ほんの僅かに感じ取れるだけのもの。
けれど時折、声を聞かずとも、近くにいるだけで胸へ届いてしまうほど、強く軋む音がある。
目の前の青年が纏うものは、まさにそれだった。
冷たい、というだけではない。
静か、というだけでもない。
ひどく張り詰めている。
触れれば切れてしまいそうなほど鋭く、けれどその奥で、絶えず何かが軋んでいるような音。
長く押し殺され続けた痛みが、刃の形を取って立っているような。
理由は分からない。
何が彼をそうさせているのかも。
けれど、聞き取ってはいけないところまで触れてしまいそうで、胸の奥がざわついた。
喉の奥が、微かに熱を持つ。
ニルヴァーナが、私の動揺に応じたのだろうか。
私は無意識に喉元へ指を添えた。
その時だった。
青年の刀が、ぴたりと止まる。
暗い瞳が、真っ直ぐこちらへ向いた。
息が詰まる。
新入りを歓迎する温度など、そこにはなかった。
ただ、鍛錬を邪魔されたことへの苛立ちと、見知らぬ人間への冷たい警戒だけがある。
それでも、視線が絡んだ瞬間、彼の眉がほんの僅かに寄った。
私が動揺を隠しきれていなかったせいかもしれない。
それとも、私が見つめすぎていたからか。
青年は何も言わず、すぐに興味を失ったように視線を外す。
再び刀が振るわれ、鋭い金属音が鍛錬場へ響いた。