第4章 【第三話】檻と家のはじまり
不意に、アレンと食事をした夜を思い出した。
訓練で疲れきった身体のまま、師匠の作った借金について二人で文句を言いながら、安いスープを分け合った日々。
今、この味をアレンにも食べさせてあげたい。
そんな思いが浮かび、匙を持つ手が僅かに止まった。
「……ティファ?」
リナリーが心配そうに呼ぶ。
私は小さく首を振った。
「何でもないの。とても美味しくて……少し、思い出しただけ」
「そっか」
リナリーは、それ以上聞かずに柔らかく微笑んだ。
向かいのラビは、何も言わずに私を見ていた。
けれど、私が視線を向けると、すぐにいつもの調子で口を開く。
「な?オレの案内、間違ってなかっただろ?」
「ええ。食堂については、あなたを信用してもよさそうね」
「そこだけ!?」
ラビが大袈裟に胸を押さえる。
リナリーが吹き出し、私も小さく笑った。
ここでなら。
もしかすると、私も新しい日々を始められるのかもしれない。
そう思えた。
食事を終える頃、リナリーがふと思い出したように顔を上げた。
「少し休んだら、簡単に本部の中を案内するわね。医務室や鍛錬場の場所だけでも知っておいた方がいいでしょう?」
「ええ、お願いするわ」
「オレも行くさ」
ラビがすかさず口を挟む。
「ラビは本当に暇なの?」
「新しい仲間を案内するのは、立派な交流活動さ」
リナリーは溜息を吐いたけれど、今度は追い払わなかった。