第4章 【第三話】檻と家のはじまり
食堂の扉を開けた途端、温かな香りが押し寄せてきた。
焼きたてのパン。
煮込まれた肉と野菜。
香辛料の柔らかな匂い。
広い食堂の中では、多くの団員たちが賑やかに食事をしている。
皿の触れ合う音。
任務の話をする声。
笑い声。
そのすべてが、これまでの旅暮らしにはなかったものだった。
「ジェリー!」
ラビが声を張る。
厨房の奥から、派手な身振りの人物が勢いよく顔を出した。
「なぁに、ラビ!騒がしいわねぇ!」
「新入りの歓迎メニュー、頼むさ!」
「新入り?」
ジェリーさんの視線が、私へ止まる。
次の瞬間、ぱっと顔が輝いた。
「まぁ!なんてエレガントなの!あなたが今日来たっていう ティファちゃんね!」
「あ……はい。初めまして」
「そんな固くならなくていいのよぉ!お腹空いてるでしょう?ジェリー特製シチュー、たっぷり食べさせてあげる!」
あまりの勢いに戸惑いながらも、自然と口元が緩む。
リナリーに促され、私は空いている席へ腰を下ろした。
ラビも当然のように向かいの席へ座る。
「食堂は教団で一番大事な場所さ。ここ押さえとけば、任務で疲れて帰ってきても生き返れる」
「随分と力説するのね」
「ジェリーの飯を侮ると後悔するぞ」
「ラビは食べすぎなのよ」
リナリーが呆れたように笑う。
間もなく、湯気の立つシチューと柔らかなパンが運ばれてきた。
匙を取り、一口だけ口へ運ぶ。
温かい。
その温度が、冷えた身体へゆっくり染み込んでいく。