第32章 【第二十八話】赤い紐の先
やがて、ラビは苦しそうに息を吐き、額を寄せる。
「……今なら、まだ止まれる」
熱に流されず、答えを待つ声だった。
明け方には、また危険な旅が始まる。
不安は、何ひとつ消えていない。
それでも、今だけは。
この手を離したくなかった。
ティファは震える指で、彼の手へ自分の手を重ねる。
「……止まらないで」
ラビの呼吸が、僅かに止まった。
「今夜は、ラビの傍にいたい」
その瞬間、ラビの表情が崩れた。
何かを堪えるみたいに目を伏せ、それから壊れ物へ触れるようにティファの頬を包む。
「……ちゃんと大事にするから」
掠れた声に、ティファは小さく頷いた。
その答えを見た瞬間、ラビはもう、耐えられなかった。