第4章 【第三話】檻と家のはじまり
露わになった翠の瞳が静かにこちらへ向けられ、私の表情を、歩き方を、喉元へ触れていた指先を、何一つ取り零さないように見ている。
――また。
回廊で手を取られた時に感じた、声の奥の冷たい響き。
明るいラビの音とは別に、少し離れた場所でこちらを観察しているような、乾いた静けさ。
その二つが、今度ははっきりと重なって聞こえた気がした。
私が立ち止まったことに気付いたのだろう。
ラビの目が、僅かに細くなる。
次の瞬間には、いつもの笑みが戻っていた。
「早く戻ってこいよ、 ティファ。腹減って倒れても知らねぇぞ」
「縁起でもないこと言わないの、ラビ」
リナリーがすぐに叱る。
私は答えの代わりに、小さく会釈だけ返した。
胸の奥へ、また一つ、冷たい引っかかりが落ちる。
あの人は、笑っている時ほど、何かを隠している。
けれど、それが何なのかまでは分からない。
それ以上考える間もなく、私はコムイさんと共に科学班の区画を後にした。