第4章 【第三話】檻と家のはじまり
頷くと、リナリーが私の傍へ歩み寄った。
「兄さん、私も――」
「リナリーは、ここで待っていてくれるかな」
コムイさんは、穏やかな声でそう遮った。
「初回の確認は、僕が立ち会うよ。室長として確認しておくべきこともあるからね」
リナリーは一瞬だけ心配そうに私を見る。
けれど、すぐに小さく頷いた。
「……分かったわ。 ティファ、私はここで待ってるから。終わったら一緒に食堂へ行きましょう」
「ありがとう、リナリー」
「オレもここで待ってるさ」
ラビがすかさず片手を上げる。
「 ティファが戻ってきた瞬間、食堂まで案内する大事な役目があるからな」
「あなた、いつから案内役になったのよ」
「初対面の瞬間から?」
「勝手に決めないの」
リナリーに呆れられ、ラビは大袈裟に肩を落とす。
「じゃあ、 ティファ。終わったら食堂な。これは予約ってことで」
「まだ私の予定を勝手に決めているの?」
「歓迎する側の特権さ」
悪びれもせずに笑う。
明るく弾む声。
回廊で出会った時と変わらない、人懐こくて軽やかな表情。
それなのに、私がコムイさんと共に部屋を出ようとした時だった。
背中へ、ひやりとしたものが触れたような気がした。
思わず振り返る。
ラビは、機械の影に立ったままこちらを見ていた。
先ほどまでの騒がしさが、嘘のように消えている。
笑顔が完全に消えたわけではない。
けれど、そこにはもう、女の子を口説いてはしゃぐ少年の色はなかった。