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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第28章 【幕間】神田/月影の楽園 後編


「……嫌ね」

気付けば、小さく零れていた。

神田が僅かに眉を動かす。

私は静かに続ける。

「守るための組織なのに」

一度、言葉を飲み込む。

「誰かを、あんなふうに傷付けるなんて」

沈黙。

冷たい風だけが、石畳を吹き抜けていく。

私は小さく目を伏せた。

サフィアも。

あの白い部屋も。

きっと始まりには、誰かを失いたくないという願いがあった。

その願いが少しずつ形を歪め、人を傷付けるものへ変わっていく。

「……人の心って、怖いわね」

声が、自然に零れた。

「愛しているはずなのに、いつか誰かを縛って、壊してしまうことがある」

神田は何も言わない。

ただ、数秒だけ黙ったあと。

「……今更だろ」

低く吐き捨てた。

その声は、妙に静かだった。

私は小さく息を吐く。

脳裏を過るのは、エリアーデの顔だった。

AKUMAだった。

けれど、彼女は確かにクロウリーを愛していた。

愛した人に壊される瞬間でさえ、最後までその想いは消えなかった。

その一方で。

人間なのに、平気で他人を踏み潰す者もいる。

サフィアを商品として扱った者達。

神田を白い部屋へ閉じ込めた者達。

「……人って、何なのかしらね」

小さく零れる。

神田は黙ったまま、白み始めた空を見ていた。

「身体が人なら、それで人なのか」

朝焼け前の風が、銀髪を揺らす。

「心があれば、人なのか」

答えは出ない。

けれど、その問いだけが胸の奥へ静かに沈んでいく。
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