第4章 【第三話】檻と家のはじまり
彼はすぐに、先ほどと同じ人懐こい笑みを浮かべた。
けれど、その翡翠の瞳だけが、ほんの一瞬、笑わなかった。
こちらがまだ自分を警戒しているのか。
それとも、何かに気付いているのか。
確かめるような静かな視線。
次の瞬間には、彼はもう大袈裟に笑いながらリナリーへ文句を言っている。
私は前へ向き直った。
この人は、何者なのだろう。
ただ、軽薄で人懐こい少年ではない。
けれど、冷たいだけの人でもない。
二つのまるで違う音が、同じ笑顔の中に重なっている。
それがなぜなのか。
今の私には、まだ分からなかった。