第4章 【第三話】檻と家のはじまり
「ちょっとって何さ、ちょっとって」
「黙ってて」
ぴしゃりと言われ、ラビが口を尖らせる。
その声音も表情も、あまりに自然だった。
だからこそ、ほんの少し前に感じた冷たい響きが、かえって胸へ残る。
少女は改めて、私へ柔らかな笑顔を向けた。
「私はリナリー・リー。兄から聞いていたの。クロス元帥の弟子が、今日ここへ来るって」
「 ティファよ。よろしく、リナリー」
「 ティファ……素敵な名前ね」
リナリーは嬉しそうに微笑み、私へ手を差し出した。
「ようこそ、黒の教団へ。長い旅で疲れたでしょう?まずは兄さんのところへ案内するわ」
差し伸べられた手を握る。
小さな手だった。
けれど、その温度は不思議なほど心強かった。
何かを測るような静けさはない。
ただ、これから仲間になる者を迎えてくれる、まっすぐな温かさだけがそこにある。
張り詰めていた胸の奥が、ほんの少しだけ緩む。
「ありがとう。よろしくね、リナリー」
「うん。こちらこそ!」
リナリーは明るく頷くと、私の腕へそっと手を添えて歩き出した。
すると、耳を擦っていたラビが慌てたように声を上げる。
「ちょ、待ってよリナリー! ティファの案内なら、オレも行くさ!」
「ラビは来なくていいの」
「なんで!?オレ、食堂も科学班もすげぇ詳しいのに!」
「あなたがいると話が進まないからよ」
「酷くない!?」
二人のやり取りが、冷たい石造りの回廊へ賑やかに響く。
私は歩きながら、ほんの少しだけ振り返った。
こちらへ駆け寄ってくるラビと、再び目が合う。