第4章 【第三話】檻と家のはじまり
淀みなく言葉が溢れてくる。
握られた手を引く間もなく、ラビと名乗った少年は満面の笑みで顔を覗き込んできた。
「いやぁ、びっくりした。新入りが来るって話は聞いてたけど、こんな綺麗な子だとは思わなかったさ」
「……あの」
「しかも、なんか雰囲気あるし。いきなり本部の廊下歩いてるだけで絵になるって、ずるくね?」
明るい。
驚くほど人懐こく、距離が近い。
軽口も、笑い方も、こちらを覗き込む仕草さえ妙に自然だった。
普通なら、あまりの勢いに戸惑うだけで終わっていたと思う。
けれど、握られた指先から伝わるものに、私は僅かに息を止めた。
――音が、重ならない。
人の声には、感情の揺れが滲む。
嬉しければ明るく跳ねるし、戸惑えば微かに濁る。言葉で取り繕っていても、魂の奥にある音までは綺麗に隠せない。
けれど、彼の声は違った。
表に響くのは、屈託のない少年の声。
突然現れた女の子に浮かれ、軽口を叩き、楽しそうに笑っている音。
それは、嘘ではない。
けれど、そのすぐ奥に、もう一つの響きがあった。
乾いている。
静かで、冷たく、こちらの反応を何一つ取り零さないように見つめている。
笑っているのに、同時に観察している。
興味を向けているのに、どこか自分自身だけは遠くへ置いている。