第23章 【第二十二話】もう戻れない夜
胸の奥が、甘く痺れる。
私は無意識に、彼のTシャツを掴む指へ力を込めた。
するとラビが、困ったみたいに小さく笑う。
「……幸せ過ぎて、やばい」
その声音が、思っていたより幼くて。
嬉しさを隠せずにいるみたいで。
私は胸が締め付けられるほど愛しくなった。
「……ラビ」
名前を呼ぶ。
ラビの翠の瞳が、ゆっくり細められる。
「今、その声で名前呼ばれんの、かなり危ねぇ」
「またそれ?」
小さく笑うと、ラビも笑った。
けれど、抱き締める腕は離れない。
「ティファ」
低い声。
私は小さく顔を上げる。
「……もう少しだけ、このまま」
掠れた声だった。
その響きがあまりにも優しくて、胸の奥がじんわり熱くなる。
私は答える代わりに、彼の胸元へそっと額を預けた。
するとラビが、堪え切れなくなったみたいに私を抱き締める。
強い腕。
熱い体温。
けれど不思議と苦しくない。
むしろ、ようやく帰る場所を見つけたみたいに安心した。
雪はまだ静かに降り続けている。
月光に照らされたチャペルの中。
私達はしばらく、言葉もなく寄り添っていた。