• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第23章 【第二十二話】もう戻れない夜


ラビの表情へ、ほんの少しだけ影が落ちる。

「……じじいに知られたら、殺されるかもな」

冗談めいた声だった。

けれど、その奥にある痛みを、私は見逃せなかった。

「記録者失格って……言われるかもしれねぇ」

胸が少しだけ痛む。

病室で、彼が零した言葉を思い出す。

――誰にも執着しちゃ駄目なんさ。

――誰かの人生へ入り込み過ぎるなって。

私は、彼のTシャツを掴む指へそっと力を込めた。

「……それでも?」

掠れた声で問う。

ラビはすぐには答えなかった。

ただ、苦しそうに目を伏せる。

言葉にすれば、もう本当に戻れなくなる。

それを分かっているみたいに。

それでも私は、彼から目を逸らさなかった。

「私は、ラビがブックマンの道を選んでも好きよ」

静かなチャペルへ、自分の声が小さく響く。

「だから……ブックマンだからって、私から離れようとしないで」

ラビの翠の瞳が、僅かに揺れた。

「苦しいなら、一人で抱えないで」

静寂。

ラビは数秒、何も言わなかった。

ただ、堪えるみたいに唇を結び、それから小さく笑う。

「……ほんと、敵わねぇ」

掠れた声。

次の瞬間、彼の腕がゆっくり私の背へ回った。

傷を避けながら。

逃がさないように。

けれど、壊さないように。

矛盾した熱を抱えたまま。

ラビは私の額へ、自分のそれを押し当てる。

「……もう戻れねぇさ」

低く落ちた声。

「戻る気も、ねぇよ」
/ 537ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp