第23章 【第二十二話】もう戻れない夜
その響きがあまりにも甘くて、胸の奥が熱く震えた。
私は答える代わりに、彼のTシャツを掴んだまま、ほんの少し顔を上げる。
それだけで十分だった。
再び、唇が重なる。
今度はさっきより少し長い。
確かめるように。
失いたくないものへ触れるように。
ゆっくり、熱を重ねられる。
触れるたび、頭がぼうっとしていく。
静かなチャペル。
雪の降る夜。
誰もいないはずなのに、見つかってはいけないことをしている気がして、胸が甘く苦しくなる。
「……っ」
漏れた小さな息へ、ラビの腕が僅かに強くなる。
けれど、右肩の傷へ触れないように、抱き寄せる力はどこまでも慎重だった。
離れたくない。
けれど、傷付けたくない。
そんな彼の気持ちまで伝わってくるみたいで、胸がいっぱいになる。
やがて唇が離れる。
ラビは額を寄せたまま、苦しそうに息を吐いた。
「……これ、夢じゃねぇよな」
掠れた声。
私は小さく笑いそうになって、けれど胸が熱過ぎて上手く笑えなかった。
「私も……まだ、信じられない」
「だよな」
ラビが、少しだけ笑う。
けれどその翠の瞳は、ひどく熱を孕んでいた。
「……こんな満たされんの、初めてさ」
その声が、胸の奥へ深く落ちてくる。
私は息を呑む。
ラビの指先が、そっと私の銀髪を梳いた。
壊れ物へ触れるみたいに優しく。
けれど。
不意に、その指が僅かに止まった。