第23章 【第二十二話】もう戻れない夜
部屋へ戻ってからも、胸のざわつきは少しも収まらなかった。
本を開いても、文字が頭へ入ってこない。
窓の外を見て。
時計を見て。
また、小さく息を吐く。
気付けば何度も、書庫でのラビの顔を思い出していた。
――そりゃ、行かねぇわけねぇな。
低く掠れた声が、何度も耳の奥で蘇る。
そのたびに胸の奥で『ニルヴァーナ』が甘く脈打った。
私は堪え切れず、ベッドへ倒れ込む。
枕へ顔を埋めても、熱は少しも冷めてくれない。
「……もう、駄目」
掠れた呟きが、静かな部屋へ溶ける。
怖い。
今夜、ラビへ気持ちを伝えたら、きっと何かが変わる。
昨日までのようには戻れない。
それでも。
戻りたいとは、もう思わなかった。
こんなに夜が待ち遠しいなんて、知らなかった。