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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第23章 【第二十二話】もう戻れない夜


教団の書庫は、昼間でも静かだった。

高い本棚が幾重にも並び、古い紙とインクの匂いが、薄暗い空気へ溶け込んでいる。

窓から差し込む淡い光が、宙を漂う埃を金色に浮かび上がらせていた。

私はゆっくり奥へ進む。

胸の奥で、鼓動がひどくうるさい。

アレンへ告げた言葉が、まだ身体の内側へ残っている。

――ラビが、好き。

口にした瞬間、もう戻れないと思った。

けれど、不思議と後悔はなかった。

ただ、次は本人へ伝えなければならない。

そう思うだけで、指先が微かに震えた。

本棚の並びを抜け、一番奥の窓際へ視線を向ける。

そこに、本を片手に椅子へ凭れている赤みを帯びた髪を見つけた。

どくん。

心臓が跳ねる。

ラビはページを捲る手を止め、ゆっくり顔を上げた。

片方だけ覗く翠の瞳が、私を捉える。

数秒の沈黙。

やがて。

「……ティファ?」

少し意外そうな声だった。

私は喉が渇くのを感じながら、彼の前まで歩いて行く。

ラビは手にしていた本を閉じた。

けれど、珍しくすぐには軽口を叩かなかった。

ただ、翠の瞳だけが、探るみたいに私を見ている。

昨日から、あれほど真っ直ぐに私へ踏み込んできたくせに。

今は、期待していることを悟られたくないみたいに、ほんの少しだけ息を潜めていた。

私はそんな彼を見つめる。

昨日からずっと、胸を掻き乱している人。

触れられるだけで、呼吸が出来なくなる人。

それでも離れたくないと、初めて思ってしまった人。
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