第22章 【第二十一話】雪明かりの答え
分かっていたはずの違いを、アレンの優しさに触れた今、改めて確かめてしまう。
アレンは何も悪くない。
こんなにも真っ直ぐで、優しいのに。
それでも、私の魂を掴んで離さないのは、もう別の人だった。
もし今、ラビが私を呼んだら。
私はきっと、迷わず振り返ってしまう。
その事実が、残酷なくらい鮮明だった。
私は無意識に、マグカップを持つ指へ力を込める。
温かな紅茶。
けれど、胸の奥は少しも落ち着いてくれない。
アレンはそんな私を見ていた。
静かに。
何かを悟り始めているような目で。
私は喉が苦しくなる。
言わなきゃいけない。
曖昧なまま、優しさへ甘えてはいけない。
そう分かっているのに、言葉が出てこない。
その時だった。
遠くの回廊から、誰かの笑い声が微かに聞こえる。
その中に混ざった、聞き慣れた低い声。
――ラビ。
たったそれだけで。
心臓が、どくん、と大きく跳ねた。
自分でも分かるくらい、身体が反応してしまった。
アレンの瞳が揺れる。
私ははっと息を呑んだ。
気付かれた。
今の一瞬で。
アレンは数秒、何も言わなかった。
ただ静かに視線を伏せる。
やがて。
「……そっか」
掠れた声が落ちる。
胸が痛んだ。
私は慌てて口を開く。
「アレン、違うの。ちゃんと――」
「……大丈夫です」
遮る声は、驚くほど穏やかだった。
けれど、その穏やかさが余計に苦しい。