第22章 【第二十一話】雪明かりの答え
静かな時間だった。
雪を見ながら、温かな紅茶を飲む。
アレンは何も急かさない。
ただ隣にいてくれる。
その優しさが、胸へ静かに染み込んでいく。
「……ティファ」
不意に、アレンが小さく口を開いた。
「無理、してませんか」
私は視線を落とす。
「してないわ」
「嘘です」
即答だった。
けれど責める声じゃない。
むしろ、痛いくらい優しい。
アレンは少しだけ眉を下げた。
「最近ずっと考え込んでる顔してるから」
図星だった。
私は誤魔化すように紅茶へ口を付ける。
アレンはそんな私を見つめたあと、そっと手を伸ばしかけた。
けれど、触れる直前で、その指先が止まる。
まるで、踏み込み過ぎてはいけないと自分へ言い聞かせるみたいに。
その一瞬の迷いが、胸へ刺さった。
やがてアレンは、小さく息を吐く。
「……髪、跳ねてます」
掠れた声。
そっと触れた指先は驚くほど優しい。
乱れた銀髪を梳く仕草も、壊れ物へ触れるみたいに慎重だった。
けれど、その優しさの奥に、“触れたい”という熱が隠し切れていない。
どくん、と。
心臓が跳ねる。
けれど次の瞬間。
脳裏へ浮かんだのは、別の指先だった。
耳へ掠める熱。
意地悪く笑う声。
マフラー越しの匂い。
――本気で離したくねぇって思ったの、お前が初めてだ。
息が詰まる。
どうして。
今、触れているのはアレンなのに。
思い出してしまうのはラビなんだろう。