第22章 【第二十一話】雪明かりの答え
Side:ラビ
人気のない回廊。
窓の外では雪が静かに降っている。
先を歩いていたブックマンが、やがて足を止めた。
「……お前、自覚あるのか」
低い声が落ちる。
ラビは壁へ寄り掛かりながら、面倒臭そうに片目を閉じた。
「何の話さ」
「惚れ込んどる顔しとるぞ」
即答だった。
ラビの口元から、笑みが消える。
静寂。
雪の降る音だけが、微かに響いている。
やがてラビは、小さく息を吐いた。
「……分かってる」
掠れた声。
「分かってるけど、もう無理なんさ」
翠の瞳が伏せられる。
「見てるだけで良かったはずなのに」
ブックマンは静かに目を細めた。
「なら切り捨てろ」
低い声音。
雪より冷たい声だった。
「情は記録を鈍らせる。執着は判断を狂わせる」
ラビは何も言わない。
ブックマンは続ける。
「失いたくないと思った時点で、お前はもう“中立”ではおれん」
静かな回廊へ、雪の降る音だけが響く。
「今ならまだ戻れる」
低く落ちた言葉。
「記録者として生きるか、“男”として堕ちるか選べ」
長い沈黙。
ラビは俯いたまま動かなかった。
やがて。
「……じじい」
掠れた声。
「オレ、ブックマン辞める気ねぇよ」
ブックマンの目が細められる。
ラビは壁へ凭れたまま、小さく笑った。
「歴史を記録すんのも、全部背負うのも、オレが選んだ道さ」
静かな声。
「逃げる気はねぇ」
けれど次の瞬間。
翠の瞳へ、どうしようもない熱が滲む。
「でも」
掠れた声。
「ティファも、もう手放せねぇ」