第22章 【第二十一話】雪明かりの答え
食堂でマフラーを返したあとも、胸のざわつきは少しも消えてくれなかった。
むしろ、ラビの首へ巻き直された橙色の布を見るたび、昨夜の熱が鮮明に蘇ってしまう。
私は逃げるように席へ着き、まだ温かい紅茶へ口を付けた。
けれど。
「ティファ、砂糖入れすぎじゃない?」
向かいへ座ったリナリーが、くすりと笑う。
「え?」
気付けば、角砂糖を三つも落としていた。
私は慌てて砂糖壺から手を引っ込める。
その様子を見て、ラビが吹き出した。
「朝から動揺し過ぎさ」
「してないわよ!」
反射的に言い返す。
けれど、ラビは頬杖をついたまま、じっとこちらを見ていた。
片方だけ覗く翠の瞳には、昨夜までとは違う熱が宿っている。
もう、“隠す気がない”。
そう言われているみたいだった。
私は耐え切れず視線を逸らす。
その時だった。
「ラビ」
低い声が、食堂へ静かに落ちる。
空気がわずかに変わった。
振り返ると、入口にはブックマンが立っていた。
「じじい?」
ラビが眉を寄せる。
ブックマンはちらりと私を一瞥したあと、静かに口を開いた。
「少し来い」
有無を言わせない声音。
ラビは小さく舌打ちしたが、すぐ立ち上がった。
「悪ぃ、ちょっと行ってくる」
去り際。
机の下で、彼の指先が一瞬だけ私の手へ触れる。
びくり、と肩が揺れた。
ほんの一瞬。
けれど、“待ってろ”とでも言うみたいな熱だった。
ラビは何事もなかったように背を向け、ブックマンと共に食堂を後にする。
私はその背中を、しばらく見つめてしまっていた。
ラビが食堂を出て行ったあと、私は結局、甘くなり過ぎた紅茶へほとんど口を付けられなかった。
そんな私を見て、リナリーがそっと席を立つ。
「ティファ、少し歩かない?」
柔らかな声に、私は小さく頷いた。