第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
私は慌ててベッド脇へマフラーを押し込み、咳払いする。
「……いいわよ」
扉が開く。
リナリーが心配そうな顔で部屋へ入ってきた。
「大丈夫? 昨日かなり飲んでたから……」
「う……ちょっと頭痛い……」
「やっぱり」
リナリーが苦笑する。
「ティファ、途中までは全然平気そうだったのに」
私は視線を逸らした。
そこから先の記憶が曖昧だ。
歓迎会。
ラビの顔。
そして。
――酔ったティファ、可愛すぎて心臓に悪ぃ。
「っ……」
思い出した瞬間、顔が熱くなる。
リナリーが不思議そうに首を傾げた。
「ティファ?」
「な、何でもない!」
慌てて誤魔化す。
その拍子に、ベッド脇からオレンジ色の布が少しだけ覗いた。
リナリーの視線が止まる。
私は固まった。
数秒の沈黙。
そして。
「……ラビの?」
「っ!!」
反射的に、そのマフラーを掴む。
顔から火が出そうだった。
「ち、違……いや、違わないけど……!」
「ふふ」
リナリーが小さく笑う。
からかうというより、微笑ましそうな笑い方だった。
「ラビが部屋まで運んでくれたのよ」
どくん、と心臓が跳ねる。
「……そう、なの?」
「うん。ティファ、完全に寝ちゃってたから」
私はマフラーを抱えたまま固まった。
全然覚えていない。
けれど、こうして残っている匂いだけが妙にリアルで、余計に落ち着かなくなる。