• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い


ラビの表情が、ぴたりと止まった。

先ほどまでの呆れた空気が、一瞬で消える。

私は反射的に息を詰めた。

けれど、その重たい沈黙を壊したのは――。

「はい、返しますね」

アレンだった。

男達から剥ぎ取っていた服を、丁寧に畳みながら差し出している。

「寒いでしょう?」

男達がぽかんと口を開けた。

「……へ?」

「クロウリーの物は返してもらいましたし、僕達は別にあなた達の服が欲しいわけじゃないので」

あまりにも真顔だった。

ラビが呆れたように息を吐く。

「お前、黒いんだか聖人なんだか、どっちなんさ……」

「冬ですし、風邪を引きますよ」

アレンは至極真面目である。

男達は慌てて服を引っ掴み始めた。

「な、何なんだよ兄ちゃん……」

「怖ぇよ、逆に……」

その中で。

瓶底眼鏡の男だけが、座席へ頬杖をついたままこちらを見ていた。

相変わらず気の抜けた笑み。

けれど、その目だけは妙に暗い。

「優しいねぇ、兄ちゃん」

「そうですか?」

「普通、ここで全部奪うだろ」

アレンは少し考えたあと、小さく首を傾げる。

「別に、そんな必要ないですし」

男は数秒アレンを見つめ――ふっと笑った。

「……そっか」

そして、ゆっくり立ち上がる。

服を羽織りながら、こちらへひらひらと手を振った。

「じゃ、またな」

その瞬間。

男の視線が、もう一度だけ私へ向く。

「お嬢さんも、また会おうぜ」

ぞくり、と。

今度ははっきりと、嫌な寒気が背筋を這った。
/ 537ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp