第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
「師匠が?」
アレンが思わず身を乗り出す。
「御祖父様の訃報を聞いて来た友人だと言っていたのである。以前預かっていたものを返しに来た、と」
「預かっていたもの?」
「花である。食人花の赤ちゃん」
その言葉に、私とアレンは同時に顔を見合わせた。
「……まさか、あの花」
「覚えているんですか、ティファ」
「ええ。師匠に世話を押し付けられたもの」
脳裏へ、宿の窓辺に置かれていた小さな鉢植えが蘇る。
小さな花弁の奥に、妙に鋭い牙を覗かせた食人花。
それを前に、まだ幼かったアレンが顔を青くしていた。
師匠は煙草を咥えたまま、泣きそうなアレンの頭を片手で掴み、面倒そうに言い放ったのだ。
――枯らしたりしたら、貴様の頭も枯らすからな。
――頭を枯らすって何ですかぁぁぁ!?
思い出したのか、アレンの顔が引き攣った。
「まさか、あの花をクロウリーへ返しに来ていたなんて……」
「で、クロス元帥は花を返しただけだったんさ?」
ラビが尋ねると、クロウリーは頷いた。
「うむ。ただ、その花が少しおかしかったのである」
「おかしかった?」
「突然、吾輩の指へ噛み付いたと思ったら、みるみる枯れてしまったのである」
私は眉を寄せる。
「噛み付いた直後に?」