第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
翌朝。
雪の降り続く村を後にし、私達はクロウリーを連れて、教団本部へ向かう汽車へ乗り込んだ。
重たい蒸気を吐き出しながら、汽車は白い雪原を走っていく。
窓の外では、霞む景色がゆっくりと後ろへ流れていた。
クロウリーの胸から、エリアーデを失った悲しみが消えたわけではない。
時折、窓へ映る彼の横顔は、ふいに何かを思い出したように沈む。
けれど、初めて城の外へ踏み出した彼の瞳には、失ったものへの痛みと同じくらい、知らない世界への戸惑いと驚きが宿っていた。
座席の端へ腰掛けたまま、クロウリーは窓へ張り付くように外を眺めている。
「おお……外が、どんどん後ろへ流れていくのである……!」
「いや、汽車なんだから当然さ」
ラビが呆れ半分に笑った。
クロウリーは聞いているのかいないのか、今度は車内のランプへ目を輝かせている。
その様子を見ていたラビが、ふと思い出したように鞄へ手を入れた。
「そういや、クロちゃん。聞きたいことあったんさ」
取り出したのは、一枚の紙だった。
煙草を咥えた赤毛の男が、やる気のなさそうな顔で描かれている。
ラビはそれをクロウリーの目の前へ突き出した。
「この男、城で見なかったか?」
クロウリーは紙を覗き込み、すぐに大きく頷いた。
「ああ、その男なら確かに来たである!」