第20章 【第十九話】もう譲れない
医師は、それだけ言って背を向ける。
村人達はまだ戸惑った表情をしていた。
クロウリーへ向けられる視線から、恐怖が消えたわけではない。
けれど。
少なくとも今夜だけは。
彼は、雪の中へ追い返されずに済んだ。
「……皆で、泊まるのであるな」
クロウリーが、ぽつりと呟いた。
その声は、安心したというより。
一人にならずに済むことへ、縋るように弱かった。
私は静かに頷く。
「ええ。今日は休みましょう」
クロウリーの瞳が、また僅かに潤んだ。
医師に案内され、私達はそれぞれ用意された部屋へ向かうことになった。
静かな廊下を、クロウリーの歩幅に合わせてゆっくり進む。
私は彼の隣を歩きながらも、背後から突き刺さる二つの熱を感じ続けていた。
やがて、部屋へ分かれる直前。
「……ティファ」
低い声。
振り返るより早く、ラビがすれ違いざま私の手首を軽く掴む。
誰にも見えない一瞬。
その翠の瞳が、逃がさないみたいに細められる。
「ちゃんと考えとけよ」
掠れた声。
「……次は、答え聞くから」
指先が離れる。
けれど、その熱だけが肌へ残り続けた。