第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
酒場を出ると、夜の空気が火照った肌へまとわりつく。
月明かりの下、私はアレンと並んで歩いた。
暫くして、私は小さく口を開く。
「……護衛だったの?」
アレンの耳が、僅かに赤くなる。
「だって……あの人たち、ティファに近付きすぎです」
「お客さんだから、多少は仕方ないわ」
「仕方なくありません」
思いのほか強い返事に、私は足を止めた。
アレンも数歩先で立ち止まり、はっとしたように振り返る。
「す、すみません……僕……」
「ううん」
私は小さく首を振った。
「ありがとう。来てくれて、助かったわ」
その言葉に、アレンは目を伏せる。
けれど、どこか嬉しそうにも見えた。
再び歩き出す。
アレンは、いつもより僅かに私の近くを歩いていた。
それから暫く、沈黙が続いた。
けれど、滞在先へ戻る道の途中で、不意にアレンが口を開く。
「……強く、なりたいです」
小さな声だった。
私は歩みを止める。
振り返ると、アレンは真っ直ぐにこちらを見ていた。
昔のように虚ろではない。
けれど、まだ痛みを抱えたままの瞳。
「……守れるように」
胸の奥が、僅かに揺れる。
「誰を?」
尋ねると、アレンは一瞬だけ息を止めた。
視線が迷うように揺れる。
けれど、やがて小さく口を開いた。
「……大切な人を」
その言葉が、なぜか胸の奥へ残った。
私はすぐには答えられなかった。
やがて、夜風に揺れる髪を押さえながら、小さく息を吐く。
「優しいだけじゃ、誰も救えないわ」
アレンの瞳が、真剣に私を見つめる。
「この世界は、あなたが思っているよりずっと残酷だから。守りたいと願うだけじゃ、何も守れない時がある」