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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第20章 【第十九話】もう譲れない


ラビはゆっくり私へ近付いた。

ラビの指先が、一瞬だけ私の手首へ伸びかける。

けれど、途中で止まった。

それでも視線だけは、逃がしてくれなかった。

びくり、と身体が震えた。

「ティファ」

低い声。

「お前は?」

私は息を止める。

ラビの熱い視線。

アレンの真っ直ぐな瞳。

二人の感情が、逃げ場を塞ぐみたいに私へ向けられている。

答えなきゃいけない。

そう思うのに、喉が上手く動かない。

だって。

ラビといると、息が出来なくなるくらい熱くて。

アレンといると、胸が痛くなるくらい安心する。

どちらも違う形で、私の心を揺らしてくる。

「……私は」

震える声が零れかけた、その瞬間。

診療所の入口の方から、短い悲鳴が上がる。

「きゃっ……!」

「吸血鬼だ……!」

「また村へ……!」

怯えた声。

ざわめき。

私達が一斉に振り返った直後、廊下の奥から、覚束ない足音が近付いてきた。

「ティファ嬢ぉぉぉ!!」

聞き慣れた、悲痛な声。

「クロウリー……?」

廊下の角から姿を現したのは、外套を慌てて羽織ったクロウリーだった。

足元はまだふらついている。

顔色も青白い。

それでも、私を見つけた瞬間、彼は真っ直ぐこちらへ駆け寄ってきた。

背後では、診療所へ来ていた村人達が、怯えた表情で距離を取っている。
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