第20章 【第十九話】もう譲れない
どくん、と。
胸が大きく跳ねた。
ラビの笑みが、ゆっくり消える。
そして。
「……はは」
小さく笑った。
けれど、その声には妙な熱が混じっていた。
「そっか」
ラビがゆっくり私を見る。
「わりぃな、アレン」
低い声。
「オレ、もう譲る気ねぇんだわ」
ラビの低い声が、静かな廊下へ重く沈む。
私は息を呑んだ。
アレンの銀白色の瞳が、ゆっくり細められる。
「譲る、ですか」
穏やかな声音。
けれど、その奥には確かな熱があった。
「まるでティファの意思がないみたいな言い方ですね」
ラビの口角が僅かに上がる。
「じゃあ聞くけどさ」
翠の瞳が鋭く細められる。
「お前、“姉弟子”として心配してるだけ?」
空気が止まった。
私は思わずアレンを見る。
アレンは沈黙したまま、真っ直ぐラビを見返していた。
やがて。
「……違います」
静かな声。
けれど、その言葉は驚くほどはっきりしていた。
「僕はティファを、一人の女性として大切に思っています」
心臓が強く跳ねる。
ラビが「へぇ」と小さく笑う。
「言うじゃん、もやし」
「アレンです」
即座に返される。
そのやり取りはいつもと同じはずなのに、今は空気がまるで違った。
張り詰めている。
二人とも、一歩も引かない。