第20章 【第十九話】もう譲れない
Side:ティファ
アレンが病院へ辿り着き、静かな廊下へ足を踏み入れた瞬間。
窓辺へ寄り掛かる銀髪が目に映る。
「……ティファ」
アレンの声に、私ははっと顔を上げた。
「アレン……? クロウリーは?」
「少ししたら来ます。自分も病院へ行くからって」
そう答えながら、アレンはゆっくりこちらへ歩み寄ってくる。
静かな廊下。
窓の外では雪が降り続けていた。
アレンは私の前まで来ると、包帯の巻かれた右肩へ視線を落とした。
その瞬間、彼の表情が僅かに歪む。
「……痛みますか」
「平気よ、これくらい」
反射的に笑おうとする。
けれど。
アレンは誤魔化されてくれなかった。
「また、そうやって無理をする」
低い声。
責めているわけじゃない。
むしろ、痛いくらい優しい。
アレンはそっと私の肩へ触れた。
包帯の上から、壊れ物みたいに慎重に。
「ティファはいつも、自分より周りを優先する」
その指先が微かに震えている。
「……僕は、もうあなたが傷付くのを見たくないんです」
胸が、ぎゅっと締め付けられる。
私は視線を逸らした。
優し過ぎる。
真っ直ぐ過ぎる。
その想いが、時々怖くなるくらいに。
「大袈裟よ」
「大袈裟じゃありません」
即答だった。
アレンは一歩近付く。
逃げ場がなくなる。
「どうして、自分を犠牲にするようなことばかり……」
掠れた声。
その瞬間、私は気付く。
アレンは怒っているんじゃない。
怖かったのだ。
失うのが。