第20章 【第十九話】もう譲れない
Side:アレン
その頃。
古城では、アレンが静かな部屋でクロウリーを見守っていた。
崩れた窓から吹き込む夜風が、古いカーテンを揺らしている。
クロウリーはベッドへ腰掛けたまま、ぼんやりと両腕を見つめていた。
エリアーデの血を浴びたことで、蒸発していた身体は完全に再生している。
戻った腕を、クロウリーはまだ他人のものみたいに静かに握り開きしていた。
アレンはそんな彼へ毛布を掛け直しながら、小さく息を吐く。
だが、その視線は何度も窓の外へ向いてしまう。
ティファの傷が気になって仕方ない。
あれだけ出血していたのだ。
無理をしていないだろうか。
ちゃんと休めているだろうか。
アレンの指先が、無意識に左腕を握り締める。
その様子を見ていたクロウリーが、ぽつりと呟いた。
「……ティファ嬢のところへ、行かないのであるか?」
アレンははっと顔を上げる。
「ですが、クロウリーを一人には……」
「吾輩なら……大丈夫である」
そう口にする声は、ひどく弱かった。
クロウリーは自分の戻った腕を見下ろし、ゆっくり指を握り込む。
「……いや。大丈夫ではないかもしれぬ」
小さく、苦しそうに笑った。
「だが、今のお前の顔も……大丈夫な顔ではないのである」
アレンは息を呑んだ。