第20章 【第十九話】もう譲れない
私は唇を噛んだ。
言いたくない。
こんな感情。
醜くて、子供っぽくて、自分でも嫌になる。
けれど。
「……ラビは、ああいう人が好きなの?」
気付けば、そんな言葉が漏れていた。
ラビが瞬きを止める。
私は俯いたまま続けた。
「綺麗で、大人っぽくて……色気があって」
喉が苦しい。
「“ストライク”だったんでしょ?」
最後の方は、自分でも驚くほど弱々しい声になっていた。
沈黙。
そして次の瞬間。
「……っ、はは」
ラビが額を押さえて笑い出す。
「何笑ってるのよ」
「いや……」
肩を震わせながら、ラビは低く呟いた。
「マジで嫉妬してたんだなって思って」
かあっと顔が熱くなる。
「してない!!」
「今の流れでそれは無理あるだろ」
「~~っ……!」
羞恥で死にそうだった。
だがラビは笑ったあと、不意に静かになる。
そして、椅子から立ち上がると、ゆっくり私の前へ来た。
そのまま、ベッドの端へ腰を下ろす。
近い。
肩が触れそうな距離に、思わず息が詰まった。
「……あんなの、ただの反射みたいなもんさ」
低い声。
私は息を止める。
ラビは少し困ったように笑った。
「綺麗な女見たら、とりあえず言ってるだけ」
「最低……」
「否定はしねぇ」
苦笑したあと、ラビの指先がそっと私の頬へ触れた。
「っ……」
びくり、と肩が震える。
翠の瞳が、真っ直ぐ私を射抜いた。