第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
エリアーデが眉を寄せる。
クロウリーは小さく俯いた。
そして。
「私もずっと――」
低い声が、壊れた部屋へ落ちる。
次の瞬間、クロウリーが顔を上げた。
その瞳には、もう迷いがなかった。
「お前を殺したかった!!」
咆哮。
次の瞬間、クロウリーが床を蹴った。
獣のような速度でエリアーデへ迫り、その肩口へ牙を突き立てる。
「っ――!?」
エリアーデの身体が大きく揺らいだ。
クロウリーはそのまま噛み付いた身体を振り払うように投げ飛ばす。
轟音。
エリアーデの身体が砕けた壁際へ叩き付けられた。
周囲では食人花の群れが暴れ狂い、蔓の向こうからラビ達の叫び声が途切れ途切れに響いていた。
けれど、クロウリーの目にはもう、エリアーデしか映っていない。
エリアーデはゆっくり宙へ浮かび上がると、無数の泡玉を生み出した。
月光を受けて煌めくそれは、一見すれば幻想的ですらあった。
だが、次の瞬間。
泡玉のひとつが、近くの食人花へ触れる。
じゅわり、と嫌な音が響いた。
巨大な花弁が一瞬で萎れ、みるみる水分を奪われて、黒く干からびていく。
クロウリーは、それを静かに見つめていた。
だが、視線を戻すより早く、一つの泡玉が彼の左腕へ触れる。
「っ……」
じゅっ、と音を立てて、左腕が蒸発していく。
肉が崩れ、砂のように零れ落ちる。
けれど、クロウリーは叫ばなかった。
ただ静かに、自分の腕を見下ろす。