第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
Side:クロウリー
その頃。
崩れた部屋の奥で、クロウリーはエリアーデに押さえ付けられ、血を流しながら苦しそうに彼女を見上げていた。
壊れた壁から差し込む月光が、彼女の白い肌を照らしている。
見慣れたはずの美しい顔。
愛しくて、ずっと傍にいたいと願った女。
けれど、今はもう。
その姿の奥へ潜んでいたものを、見なかったことには出来なかった。
「……エリアーデ……」
震える声。
赤い瞳には、まだ悲しみが残っている。
「愛していたのに……」
エリアーデの動きが、一瞬止まった。
クロウリーは苦しげに笑う。
「初めてお前を見た時から……ずっと……」
月光の下、牙が微かに震えた。
「お前に見惚れていた私を……敵ならば、どうしてあの時殺さず……今まで傍にいたのだ……」
その問いに、エリアーデは静かに目を伏せた。
けれど、次の瞬間。
吐き捨てるように笑う。
「だから、利用したって言ってるでしょ」
冷たい声。
「やってみたいことがあったのよ」
「そのために、正直ずっとあんたを殺すの我慢してたの……」
クロウリーの瞳から、光が消えていく。
けれど。
次の瞬間。
クロウリーは、ゆっくり立ち上がった。
血塗れのまま。
その赤い瞳だけが、静かにエリアーデを見据えている。
「……そうか」
掠れた声。
「お前は、本当にAKUMAなのだな……」