第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
「……この玉は」
低い声。
「固体の水分を蒸発させ、封じ込めるものか」
ぼろぼろと崩れていく左腕。
それでも、クロウリーは顔を上げた。
「くだらんな」
その視線が、萎れてしまった花へ向く。
「エリアーデ」
声音が、静かに沈んだ。
「おじい様の花を傷付けた罪は重いぞ」
エリアーデが鼻で笑う。
「フン」
紅い瞳が、嘲るように細められた。
「発動してハイになっても、みみっちい所は変わんないんだから」
禍々しい外殻が、ぎしりと軋む。
「この引きこもり」
クロウリーの表情が、僅かに揺れた。
エリアーデは止まらない。
「こんな花、本当はどうでもいいんじゃないの!?」
その言葉が、鋭く突き刺さる。
「外界に行けないのを全部じじぃのせいにしてさ!」
崩れた部屋へ、彼女の叫びが響いた。
「自分が城を出て傷付くのが怖いだけでしょーが!!」
クロウリーの瞳が揺れる。
「ブァーカ!! 臆病者!!」
エリアーデが笑った。
けれど、その笑顔はどこか泣きそうだった。
「お前なんか、この城で朽ち果てるのがお似合いよ!!」
壊れた壁から、冷たい夜風が吹き抜ける。
クロウリーはしばらく黙ったまま、静かにエリアーデを見つめていた。
そして。
「ああ……」
ぽつりと呟く。
「お前となら」
赤い瞳が、細く揺れた。
「そんな生涯を送ることになってもいいと思っていた」
エリアーデの表情が止まる。
「エリアーデ」
クロウリーは、ゆっくりと前へ踏み出した。