第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
初めは、うまく形にすらならなかった。
喉の奥に集めた光は、両手へ届く前に霧散する。
ようやく一本の細い刃を作れても、握った途端に輪郭が崩れた。
「遅ぇ。そんなんで敵が待ってくれると思うな」
師匠の言葉は、容赦がない。
何度失敗しても、休ませてはくれなかった。
一本を形として保てるようになれば、次は二本。
両手へ同時に顕現させれば、今度は足運びと呼吸を崩さずに振るえと言われる。
歌を止めれば、刃は消える。
呼吸を乱せば、光は揺らぐ。
だから私は、喉の奥で旋律を繋ぎながら、何度も何度も白銀の刃を生み出し続けた。
やがて、光は二振りの細身の剣――レイピアの形を取るようになった。
軽く、鋭く、私の動きに応じてしなる白銀の刃。
母を失ったあの日に溢れた光は、いつしか私が戦うための形を得ていた。
「……アレン、呼吸を整えて」
砂塵の舞う鍛錬場で、私は短く声をかけた。
向かいに立つアレンは、荒い息を吐きながら、異形化した左腕を構えている。
額には汗が浮かび、白い髪が頬へ張りついていた。
まだ少年の身体には、師匠の修練は過酷すぎるほどだった。
それでも、アレンは倒れない。
私は小さく息を吸った。
喉の奥で、ニルヴァーナが熱を帯びる。
淡い白銀の光が両手へ集まり、二振りの細身のレイピアとして形を結んだ。
光の刃を構え、一歩踏み込む。
鋭く突き出した右のレイピアを、アレンの左腕が受け止めた。
高い音が弾け、白銀の光が火花のように散った。
「力任せに受けないで。相手の動きを見て」
「……はい……!」